「廃墟化している歌舞伎町タワー」という嘘の記事について

新宿歌舞伎町タワー
先日現代ビジネスで配信された記事の中で「新宿歌舞伎町タワーが廃墟化している」というコラムがありました。この記事を書いているのは、都市ジャーナリストやチェーンストア研究家を名乗る方だそうですが、あまりにも事実誤認や主観で物事を語る内容が多かったため、誠に勝手ながら1つずつ訂正をしていこうと思います。

現地を歩きながらレポートするという触れ込みから始まった同記事ですが、歌舞伎町タワーに入った途端「ネガティブキャンペーン」が始まります。前提条件として、曜日問わず夕方の時間帯に人がいないというのは当たり前のことなのですが、namco TOKYOや新宿カブキhallがガラガラなどと指摘しています。あまり言いたくないのですが、この時間帯はラーメン二郎歌舞伎町店でも「穴場の時間帯」になっていることが多く、そのタイミングを狙って二郎へ行くこともあります。この記事の基準で言えばラーメン二郎歌舞伎町店も「リニューアルに失敗した廃墟化する二郎」になるはずですし、GiGO新宿歌舞伎町も「屋号を変えて失敗した廃墟化するゲーセン」になります。WARP SHINJUKUも周辺でクラブが増えてから明らかに「廃墟化」していますし、日拓エスパスに至っては無人パチンコ店と揶揄されてしまうかもしれません。

早速話が歌舞伎町タワーの外にずれてしまったのでビル内に戻りますが、ビル内にあるnamco TOKYO、新宿カブキhallの2店舗ではそれぞれ「イベント開催中に席を制限」、もしくは「立ち見のお客さんは通行の妨げになる」という看板を設置しています。廃墟化しているのであればこんな看板は不要なはずなのですが、その看板に関する言及は記事内で行われていません。夕方に訪問したと書かれているのでその時間帯に今月2度足を運んでみましたが、店員の方は忙しく商品の補充を行ったり、ホールエリアでマイクチェックなどのリハーサルが行われていました。もちろん、そのステージの前には飲食をしているお客さんの姿も複数グループありました。ピークの時間帯を迎える前に必要な諸作業を行うという、コンビニでも牛丼店でもよく見かける光景です。
新宿歌舞伎町タワー新宿歌舞伎町タワー

一番くじに対するやっかみも入っていましたが、現地を見に行った時には購入済みであることを示すシールが各用紙に大量に貼られており、個人的に1度も購入した事がなくても人気ぶりがはっきりと伝わってきました。なお、チェーン店を研究されていると自己紹介でアピールされている割には、スターバックスへの言及がほとんどありませんでしたが、同店に関しては平日夕方の時点で、靖国通り沿いのセブンイレブンや松屋並みに賑わっていました。同店のスターバックスは後述するバスの出入口からもほぼ直結する位置にあるため、ビルの構造を熟知している方がこのルートを使って直接入店するケースもあります。

封鎖されているタイミングのシネシティ広場も写真で紹介していましたが、同広場では毎月数回にわたってイベントが開催されていますし、直近ではアメトーーク!のおつまみドラフト会議と絡めたイベントを1カ月にわたって開催するという、稀に見るロングランな催しも行われていました。西武新宿PePeなどで開催されてきた著名人などによる「サプライズイベント」の役割もこちらに移行している雰囲気があり、八村塁さんなどのような日本でなかなかお目にかかれないような有名人を招いたイベントの告知なども、これまで数えきれないほど行われてきました。

新宿歌舞伎町タワー
文字数のノルマが足りなかったのか、記事内では最終的にバスなどが停まる出入口にまで「苦情」を入れられていました。バスタ新宿から1km以上歩いてこちらに来るのと、直接乗り入れが出来る環境があるのとでは、ホスピタリティに雲泥の差があります。欧米圏などから日本に到着した外国人観光客の方が、今の様な炎天下の中で時差ボケなどと闘いつつ、ヘロヘロになりながらホテルに到着するのも酷な話ですし、この対策のためにタクシープールのような場所を作ってしまったら、西武新宿駅との間にある通路が今以上に混雑してしまいます。実際、バスの発着所が出来るまでは、ビルの北側でタクシーが列をなして停車している光景もしばしば見かけましたし、ヴェルファイアから降りてきた屈強な体つきの男性が、タクシーの車列に向けて怒号を飛ばしている姿もありました。歌舞伎町タワーは賑わい創出とインバウンド需要、治安維持を同時にこなすマルチリンガルな建物でもあるのです。

たった数回の訪問で現地でお金も落とさずに分かった気になっているというのは、半沢直樹に出てくるタブレットの人みたいな、典型的な数字でしか物事を測れないタイプだと思います。

新宿歌舞伎町タワー
大前提として、東急歌舞伎町タワーはビルの半分以上がホテルとして稼働しており、エンタメ空間についてはおまけ的な立ち位置にもなるはずです。そして何より、歌舞伎町タワーのエンタメエリアが本領を発揮するのは夜中の時間帯になります。その時間帯を避けてわざわざ人がいない時間帯に「人がいない」と叫ぶのは、違和感しかありません。まさか歌舞伎町の近所に位置する早稲田大学を卒業している男性なのに、歌舞伎町1丁目程度の治安を怖がっているなんてことは無いと思いますが、てっぺん越えてからの歌舞伎町全域を1週間ぐらい街ブラした上で、本当に廃墟化しているのはどこなのか、しっかり見定めていただきたいです。

なにより、日中の時間帯であってもTHEATER MILANO-Zaが稼働すればエスカレーターを登る人がわんさか集まり、「Zepp Tokyo 完売」で検索すればあらゆる音楽ジャンルのアーティストによる公演が売り切れていることが分かります。Instagramに投稿されているリールでも、どのようなタイミングであっても後ろにお客さんがいる状態でインタビューを行ったりしているのですが、わざわざエキストラの方を呼んで撮影しているとお考えなのでしょうか。

これでもなお失敗だと言い張るのなら、広大な車寄せなどを設置しているのに、普段大して車が停まっていない西新宿2丁目の各ホテルは、淀橋浄水場からの転換に大失敗した一大ゴーストタウンという扱いになるのかもしれません。時期やタイミングを理由にご自身の主張を押し通すおつもりなら、苗場スキー場は冬かフジロックの時期ぐらいしか賑やかにならないから失敗、2月しか人が来ないから宮崎キャンプの施策は失敗、とも声高に唱えるべきだとも思います。

新宿歌舞伎町タワー
アテンション・エコノミーという概念が一部に浸透するようになってから久しくなり、このような記事への注意喚起も行われるようになりましたが、アクセス数と広告収入の魔力に勝てない人による悪意のある記事は日常的に氾濫し、そのような記事を鵜呑みにしたAIにより、悪意のある要約が行われるという負のスパイラルが発生してしまっています。インターネットでは「声がでかい方が勝ち」になりがちではありますが、声がでかい人の意見を飲み込む事が正しいのか、今一度立ち止まって確認することが必要だと改めて思いました。

最後に、新型コロナの流行が始まった2020年に「廃墟化」してしまった歌舞伎町の写真を少しだけご紹介しようと思います。歌舞伎町を取材されるのであれば、これぐらいの次元になってから廃墟化と言っていただきたいものです。

歌舞伎町1丁目 緊急事態宣言歌舞伎町1丁目 緊急事態宣言歌舞伎町1丁目 緊急事態宣言

東急歌舞伎町タワー / TOKYU KABUKICHO TOWER
アクセス | THEATER MILANO-Za | シアターミラノ座 | 客席数約900席のライブエンターテインメントシアター
Zepp Shinjuku (TOKYO) | 東急歌舞伎町タワー

アテンション・エコノミー – Wikipedia
新宿・歌舞伎町なのにガラガラ…東急「歌舞伎町タワー」が廃墟化する現状 (現代ビジネス)
[B! 東京] 新宿「歌舞伎町タワー」いつの間にか廃墟化