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「とある魔術の禁書目録 エンデュミオンの奇蹟」を見てきました(1か月前に)


実を言うと、アニメや漫画、ゲームといった、いわゆるオタクの方々が好きなジャンルについては、あまり良い印象を持っておりません。例えば2ちゃんねるなどではゲームやアニメそのものではなく、売上、販売手法に関する議論ばかりが延々と繰り返されている光景をしばしば目にします。また、Twitterでもいわゆる「アニメアイコン」と呼ばれる方々が著名人らに対して攻撃的なリプライを送ったりするなど、何かしらの問題を起こしている様子ばかりを、見かけるような気がします(元々、このような「偏見」が生まれたのは高校生の頃なのですが…)。もちろんこのような問題を起こす方々はノイジーマイノリティである可能性が高いと思いますし、自分自身も例えば「魔法少女 まどか☆マギカ」「コードギアス 反逆のルルーシュ」「侵略!イカ娘」といったアニメ作品については、話題になっているということもあって、ウィキペディアなどでどのようなあらすじなのかを簡単に調べる事は、これまでも何度かありました。それでも心の中に説明がつかない、感情論から生まれる否定的な印象が、今日までくすぶったままになっています。

ではなぜこの作品を見に行こうと思ったのか。実はこの作品に、同級生が参加しているということを知ったからです。ご本人の迷惑になるといけないので、それがキャストなのかスタッフなのか、キャストの場合はメインキャラクターなのかサブキャラクターなのか、スタッフの場合は指揮を取っているスタッフなのか指揮によって動いているスタッフなのか、そのあたりについては述べないでおきます。それに、同級生だったのも「偏見」が生まれる高校生の頃の話であり、そもそも会話を1度も交わした事がないどころか、その人物が同級生であることを卒業アルバムで確認するまで全く知りませんでした。もっと言ってしまえば、一応業界ではそれなりの知名度があり、自分自身も名前を小耳に挟む程度に知っていたのですが、それが同級生であることを昨年末まで全く知らずにいました。

昨年末に(携わっている同級生とは別の)同級生と西新宿5丁目駅近くの居酒屋で会い、「確証」を得てから、過去に放送されたとある魔術の禁書目録を取り憑かれたように見ました。元々はライトノベルという小説のようなものが原作だそうで、小説のドラマ化等と同じく、省かれたシーンなどもいくつかあるようなのですが、おおまかなストーリーは理解しました。簡単にまとめると、10万冊以上の書物を記憶する、サヴァン症候群に近い症状を持つ禁書目録(インデックス)と名乗る10代前半くらいの少女の周りで起きる科学や魔術による様々な事件・事故を、主人公である上条当麻らが解決していくといったお話で、今回映画化された話はライトノベルにも載っていないオリジナルストーリーだそうです。ちなみに、このアニメには名称こそ出ないものの西新宿も舞台の一つとして登場しており、ヒルトン東京の屋上にインデックスが捕えられていたり、新宿アイランドタワーと東京医科大学病院の間に紫色で彩られた謎のビルがそびえ立つなどしています(「とある魔術の禁書目録Ⅱ」舞台探訪(聖地巡礼)まとめ)。

(以下、ネタバレがありますのでご注意ください)

話題が相当横道にそれてしまいましたが、角川シネマ新宿で現在も上映されており、映画.com調べでは最初の週に3位にランクインしていたというこの作品についての感想を述べたいと思います。が、率直に言って「ストーリーに無理がありすぎる」というのが第一の感想でした。例えば聖人と言われる20代くらいの女性キャラクター「神裂火織」が、生身の体で宇宙に飛び出し、シャトルに乗ったインデックスと上条を助けた後に大気圏へ突入するというシーン。真空に出るというだけなら百歩譲って理解はできますが、そこでさながら昔のディズニーアニメのごとく自由に動きまわり、「後は頼みましたよ」とだけ告げて地球へと帰っていく。この様子は本当に不思議でなりませんでした。何かしらの魔術を用いた行動だとは思うのですが、これは改めて説明してもらう必要がある気がしました。他にも、戦いの最中に真空へ放り出されたのにもかかわらず、神裂のような魔術なども無しにいともたやすく前線へ戻って来た不老不死を自称するキャラクター、登場する理由があるようにはあまり思えなかったステイル・マグヌスの弟子3人、物理法則を簡単に翻しつつ車の上で格闘を続けるステイル、あまりなにを主張したいのかよくわからなかった上条の「説教」と、つっこみどころのある部分が色濃く印象付けられてしまいました。

ただ、その違和感(マイナス点)の数々をカバーしたのが、映像と音楽でした。音楽については音響設備が整っているからという面もあったかもしれませんが、それを差し引いてもコンサートのシーンは本当にその場にいるような臨場感を味わうことができました。それと並行して素晴らしい出来であることを感じたのが3Dを含めた様々な映像でした。明確な敵というわけではなかったのですが、シャットアウラ=セクウェンツィアが乗っている車のような乗り物は3Dのオブジェクトで描かれており、前述のステイルが乗る車とのカーチェイスは、映像の面では良い意味で印象に残りました。また、魔術側からはバベルの塔と揶揄されるエンデュミオンタワーについても、ありがちな3Dグラフィックの映像とは違ってとても作り込まれているような印象を持ちました。

また、アリサを演じる三澤紗千香さんの歌も素敵で、劇中の鍵になる曲でもあるoverは、悲しげなメロディから一転して希望や勇気の生まれるメロディへと変わっていく音の流れが、とても美しく感じられました。挿入歌やサウンドトラックといったアルバムはめったに購入することはないのですが、今回は半ば衝動的にアルバムを手にしてしまいました。これらの曲は、「生きる」という事に対してのアリサの気持ちが色濃く出ていたようにも思え、彼女の心の内をそのまま感じ取れるような気もしました。

以上の事を総合的に見ると、100点満点中75点ぐらいの作品として、評価させていただくのが妥当ではないかな、と判断させていただきました。創作に携わった事のない人間が言えるような事ではありませんが、もしも再び映画化されることがあったら、もう少し納得のいく設定にしていただけると良いかな、といったところです。せっかく多くのスタッフさんが関わっており、映像も音楽も素晴らしい出来になっていただけに、個人的にはストーリーの節々にどうしても納得できない所が生まれてしまったのが、非常に残念でした。ちなみに、この作品に関連して4月からは「とある科学の超電磁砲S」という、サイドストーリーのようなものも放送されるそうなので、気が向いたら、時間のある時に視聴してみようと思います。

ポラリス (劇場版「とある魔術の禁書目録 エンデュミオンの奇蹟 」劇中歌 )
三澤紗千香
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